Book Diary

日頃ただ読み散らかしているような本について、ここで紹介しながら自分的に整理してみようなどと考えていま

す。ただし経済的理由により、文庫本および新書の類が中心で、ハードカバーの最新刊は、まずご紹介できま

せん。また本の内容についても 非常に個人的な偏りがあることをお許しください。

   

「夏への扉」
R.A.ハインライン
福島正実訳
早川書房
1957年出版
1979年出版(日本)
価格 360円
読書日 1980年頃

原題の「The Door Into Summer」を当H/Pのタイトルにさせてもらったという

意味で、真っ先にここに載せなければいけない一冊です。最近やっと現実味

を持ち始めたパーソナルロボットや、すでに一般に普及してちょっと古い感じ

はいなめない機械設計分野でのCADの概念などをSFの小道具とした タイム

トラベル純愛ものです。よく考えると気に入った少女の成長をタイムトラベルし

て待つなどというのは、かなりアブナイ気もしますが、その辺はあまり深く突っ

込まないことにして読むべきなのでしょう。ちなみに山下達郎のアルバム

「Ride on Time」の中の吉田美奈子作詞の同名タイトル「夏への扉」という曲

が、この本のことをうたっているということも、一部では有名です。主人公が飼

っている猫のピートが いつも夏を捜して次々と扉を開けていく姿から このタ

イトルを使わせてもらいました。「意味がわからん。」 と思われた方は、ぜひ

ご一読を。

 
   

火星シリーズ全11巻
「火星のプリンセス」
E.R.バローズ
小笠原豊樹訳
角川文庫
1917年出版
1967年出版(日本)
読書日 1970年頃

火星シリーズ全4集
「火星のプリンセス」
E.R.バローズ
厚木淳訳
創元SF文庫
1917年出版
1999年出版(日本)合本版
価格 1700円+税

私がSFを読み始めるキッカケとなった欠かせない一冊です。南北戦争後、南

軍騎兵隊のジョン・カーター大尉が、戦の神の星火星へ突然空間移動してし

まい、そこで繰り広げられる荒唐無稽のスペースオペラ(すでに死語化しつつ

ありますが)大活劇です。腕が四本もあるバケモノのような緑色人種がいるか

と思えば絶世の美女デジャー・ソリスのいる赤色人種、悪の女神イサスを祭る

ブラックパイレーツと呼ばれる黒色人種と、各色の人種が入り乱れて相争う中

ジョン・カーターが緑色人種の盟友タルス・タルカスと共に火星を統一し、デ

ジャー・ソリスと結婚して火星の大元帥となるというお話なのです。E.R.バ

ローズは「ターザン」を書いた人で、簡単に言ってしまえば、ターザンが火星で

大暴れすると考えていただければ、話は早いと思います。そんな訳ですからこ

の本を読むときには、細かいことをいちいち考えていてはいけません。その余

りの荒唐無稽さを全て受け入れて楽しむという広い心で読んでください。この

本はそういう楽しさの味わい方を教えてくれた本なのです。ちなみにこの火星

の大元帥ジョン・カーターの愛犬キャロットのウーラのイメージから、スッタフォ

ードシャー・ブルテリアを飼ってみたいと思うようになり、HANAが家にやってく

ることになった という意味でも欠かせない一冊なのです。

本の写真が2枚載せてありますが、上は角川文庫製のものです。当時何故か 

1巻目だけは角川のものを買ったようです。もちろん2巻目からは、武部本一郎

氏のイラストに惹かれて創元SF文庫の方を買いました。下の写真は、創元SF

文庫より火星シリーズの最初の3部作が合本版となってでたのがうれしくて買

ってしまったもので、現在はこれしかないと思います。また私が読んだ創元SF

文庫の火星シリーズは翻訳者が小西宏氏でした。しかし1700円は高いです。

角川の1967年出版のものは150円、創元SF文庫の2巻目「火星の女神イサ

ス」も 180円です。

 
     

「陰摩羅鬼の瑕
京極夏彦
講談社ノベルズ
2003年08月08日出版
価格 1500円+税
読書日 2003年08月

売れ筋ブックランキング初登場1位という勢いでしたが、「塗仏の宴」以来5年

半 このシリーズ待望の一冊だったということでしょう。もちろん私もすぐ買いま

した。主人公?の一人鬱病の関口巽の語り口には、こちらも鬱になってしまい

そうな気分になるのですが、最後 古本屋にしてツキモノ落し拝み屋の京極堂

の明快な結論への展開に読後感はスッキリするのです。一応殺人事件を扱っ

ており 探偵なども登場するのですが推理小説ではなく、妖怪などのウンチク

やお話も多いのですが妖怪物でもなく、今回は日本の儒教と仏教の歴史につ

いて講義を受けたような・・・。お話の結論は途中で見えるのですが、その結

論に至るまでの、語り手が変わることによるものの見方やとらえ方の多面的な

オモシロサ、そしてなんと言っても登場人物のキャラクタの魅力と、ありとあら

ゆるウンチクでその結論を無理やり?納得させられてしまうオモシロサがある

のです。今回の作品はなぜか読み易かったのですが、私が読みなれたせいで

しょうか、京極氏の語り口がより洗練されたからなのでしょうか。

このシリーズを初めて読もうと思われた方は、シリーズ一巻目の「姑獲鳥〈ウブ

メ)の夏」から順番に読んでみることをおすすめします。登場人物のキャラクタや

関係性がわかればわかるほどおもしろいと思います。次の巻は今回ほど待た

ないですむことを希望します。

 
     

「初めての愛犬かしこい
     しつけとマナー」
石倉秀夫監修・指導
成美堂出版
2003年06月20日出版
価格 1200円+税
読書日 2003年08月

待望の犬がやっとやって来ることになりました。そんな訳でここ半年余り、犬の

選び方、飼い方、しつけ訓練などに関する本を 図書館などを利用してかなり

読んでみました。どの本も本質的にはさほど違いもなく、しつけや訓練などの

本を買うつもりはありませんでした。しかしイロイロな本を読んで一つわからな

いことがありました。それは各々のしつけや訓練をいつ頃やるのがよいのかと

いうことでした。この本には成長に従って 教えることが書かれてあるので、こ

の類の本も一冊ぐらい持っていてもいいかなと思い 買ってみました。しかし犬

もやはり生き物ということで、個性や性格や感情もあるわけで、結局は子育てと

一緒で、お互い教え教えられて成長を見守るということかな などと思い始めた

今日この頃です。

 
     

「慟哭」
貫井徳郎

創元推理文庫
1999年03月19日出版
価格 720円+税
読書日 2003年08月

本屋にこの著者の本が特集のように平積みにされて、初めてということで とり

あえずデビュー作を買ってみました。一人称を使い分けての 二つの話が同時

進行しているようにみえるトリックに いつものようにだまされました。しかしこの

本の初出が10年前だったせいか、カルトな新興宗教、幼児虐殺、警察内部の

対立とスキャンダル とすでに陳腐化してしまった話題が目白押しで、いまひと

つノメリ込めず、慟哭できませんでした。時の話題の先端を追った悲しさでしょう

か。残念ながら他作は遠慮させていただきます。あしからず。

 
     

「乙武レポート ’03版」
乙武洋匡
講談社文庫
2003年07月15日出版
価格 495円+税
読書日 2003年08月

一つのブームとなってしっまた「五体不満足」は、確か我家にも一冊あったはず

ですが読みませんでした。というわけで何の先入観?もなく、乙武君(なれなれ

しいようですがいちよう高校の後輩ということで・・・)のごく普通で健全な感性と

お話のうまさから頭のよさが感じられました。TBSの「ニュースの森」でサブキャ

スターとして、いろいろな題材をレポートしていくという仕事を通して、彼自身が

取材者として成長していき、人々に何かを伝えていくということに興味を持つよ

うになっていく様子が自然体のまま書かれておりよく伝わってきます。それは

やはり彼の文章のうまさなのだと思います。この後 彼は大学を卒業して、ス

ポーツライターとして仕事を続けているわけですが、それらが文庫化されて私が

読める日が早くくることを願っています。

 
     

「養老猛司 ガクモンの壁」
日経サイエンス 編
日経ビジネス文庫
2003年08月01日出版
価格 648円+税
読書日 2003年09月

「バカの壁」の超ベストセラーで、猫も杓子も養老先生というご時世ですが、柳

の下のドジョウではないのでしょうが、この本にも「養老猛司 ガクモンの壁」な

どというタイトルがつけられているのです。科学雑誌「日経サイエンス」に連載

された各分野の研究者との対談集です。「バカの壁」が養老先生の口実筆記

ということで非常にわかり易かったのですが、(養老先生が書かれたものはわ

かり難い場合がある?・・・)この本も対談集なので大変わかり易くおもしろい

のです。養老先生もプロローグで書いていらっしゃるように、「当人が本当に面

白いと思っていることは、他人が聞いても実に面白い」のです。例えば「耳はど

うしてこんな変な形をしているのだろう」という問いかけに、「それはこうゆうこと

です。」と淡々と論理的に説明してしまう森浩一先生のお話などは、さしずめ

「200へぇ〜」なのです。また対談者のお話に対し 養老先生が整然と持論を

展開するスリリングなシーンや、対談の長短に現れているその場の雰囲気な

ど、面白さは尽きません。しかしやはり私は、養老先生のカルトな虫の話が一

番好きなのですが・・・。

 
     

「アウトサイダー・アート」
服部正
光文社新書
2003年09月20日出版
価格 740円+税
読書日 2003年09月

アウトサイダー・アートという聞きなれない言葉に本を手に取り、ページをめくる

と、1ページ目の口絵に フェルディナン・シュヴァルの「理想宮」の写真を見て

買ってしまいました。「理想宮」とはフェルディナン・シュヴァルという郵便配達

夫が、自然石を拾い集め30数年を費やして一人で作り上げた彼の夢の宮殿な

のです。ガウディのサグラダファミリエと並んで、私が今最も見てみたい建築物

の一つなのです。話がそれましたが、アウトサイダー・アートとは、この理想宮

も含むいわゆる現在アートと言われている枠組みの外にあるアートということの

ようです。本の前半は、アウトサイダー・アートとは何かと言う話でいまいちピン

ときませんでした。芸術に関して門外漢の私にとって、アートにアウトサイドもイ

ンサイドもないように思えるのですが・・・。しかし後半のアウトサイダー・アート

と呼ばれているものの具体的な紹介は、著者の熱意もあいまって圧巻です。買

わずとも?とりあえず口絵の写真だけでも見てみる価値はあると思います。