アルマス(HARMAS)  
  アルマスとは  
   L’HARMAS(アルマス)とは、プロヴァンス語で荒地の意。

ジャン=アンリ・ファーブルは55歳の時、南仏プロヴァンスのセリニャン村に私財を投じて

1ha程の土地を買い求め、L’HARMASと名付けました。そしてその時の喜びを昆虫記

第2巻の冒頭で次のように述べています。

 これこそ私の願いだった。古代ローマの詩人ホラティウスが、「コレハ我ガ祈願ノウチニア

リキ」と歌ったもの、すなわちわずかばかりの土地。もちろんたいして広くはない。が、囲い

があって、うるさい街道からは隔てられている。ものも実らぬ、太陽に灼かれた、アザミとハ

チの好む、忘れられたわずかばかりの土地。・・・・・

「コレハ我ガ祈願ノウチニアリキ」−−−そうだ、これこそ私の願いであり、夢であった。憧

れ続けてきたのに、いつも未来という霞のなかに逃れ去っていた、私の願いであり、夢だった

のだ。・・・・・

                完訳ファーブル昆虫記 第2巻上 奥本大三郎訳 より

 その後ファーブルは、この地で30年以上の月日を費やして、昆虫記全10巻を書上げ、こ

のL’HARMASにて91歳で永眠しました。

 
     
  アルマスへの道  
   幼い頃 真夏の炎天下 蟻の巣の前にしゃがみ込み一人蟻達に見入っていた

やっと手に入れた補虫網をかまえ、いつもアゲハが通る道でじっと蝶を待っていた

小遣いを貯めて買った子供向けのファーブル昆虫記を何度も飽きずに読み返していた

かなりの年を経て本当のファーブル昆虫記を読み

ファーブルが50歳を過ぎてHARMASに移り住み、

30年余りの月日を費やして昆虫記を書上げたことを知ることとなった

 トランジスタラジオに耳を押し当てるようにして何故か洋楽ばかり聞いていた頃

好きだったグループのThree Dog Nightというおかしな名が

アボリジニが厳寒の夜を過ごす方法を表現した言い伝えだと聞きかじり

自分も好きな犬たちと共に過ごす夜を思い描いたりしていた

50歳を過ぎ やっと犬たちとの暮らしを手に入れたとき

Three Dog Nightの本当の意味を知ったような気がして

自分もそうありたいと本気で思い始めた

 いつも一人で山を歩いていた頃

山に登るというよりは、山の中を歩いていることが好きだった

人気のない木道に横になり 鳴き止んだ鳥や虫や蛙たちが再びなき始め

自分もその場に受け入れられたと感じられる瞬間が好きだった

そんな自分の歩いた山々を仰ぎ見ながら暮らしてみたいという思いが

いつの間にか心に芽生えていたことに 山を歩かなくなってから気がついた

 願いは言葉にして言い続けるといつかかなうこともあるらしい

思いがけぬ成行きから 僅かばかりの土地だが自分が自由にできることとなった

虫たちが飛び交い、犬が自由に遊び、好きな山々を望める場所

それはL’HARMASの1/10にも満たないちっぽけなところだが

アルマスと呼びたいと思った