Paper Robotics
 
 Paper Roboticsとは、紙ロボット工学(紙を材料としてロボットを作るための技術)といった意味合いです。始まりは「朽ちてゆく機械」という個人的な妄想から、機械を紙で作ろうと思い、自立した最もシンプルなロボットとも言える「茶運び人形」を紙で作ろうと思い立ったことからでした。一年半余りの試行錯誤の末、「茶運紙人形」として何とか形にはしたものの、やはりオリジナルとは言い切れない思いが消えませんでした。そんな中、子供の頃作っていた空箱を貼り合せただけのロボットを歩かせてみようと思いついたのは、自分の物づくりの原点に戻るという意味でも必然だったのかもしれません。それはPaper Robotを作り続けていく中で、機械を紙で作ることにより機械が本来持つ有用性や堅牢性などが捨て去られ、機械がもともと持ち合わせている動くことによる面白さや楽しさが表れているように思えました。またほぼゼロの状態ともいえる一片の紙から、すべての物を自分一人の手で作りだすこと、それらこそが自分がものづくりに興味を持ち、機械設計を生業とするようになった本当の理由だったのではないかと改めて気づかされたからでした。
 また同時にPaper Robot作りに工夫を重ね、新しい機構を導入し、改良してゆく中で、すり足歩行から二足歩行、そして膝付二足歩行へとPaper Robotが進化しているようにも思えました。当初ペーパークラフトでもなければ、ましてやロボットと言うにはおこがましく、肩身の狭い思いをしていましたが、作り続けていくうちにまさしくこれこそPaper Robotそのものではないかと思うようになっていました。そこでそのPaper Robotを作り出すための技術をもっともらしくPaper Robotics呼んでしまおうと思った次第です。
 Paper Roboticsという言葉自体は、以前YouTubeにアップしたPR-5の動画「Walking Paper」が海外を中心に話題になるきっかけともなったTHE VERGEでの紹介記事「Walking Biped is the ultimata in paper robotics」タイトルにあった言葉から引用したものです。paper roboticsという言葉がずっと心に引っかかっており、いつか自分のやっていることをこの言葉でまとめてみたいという想いがありました。
 さて とは言えこれはいわゆる役に立つ技術ではないことも事実です。紙で作ることにより実際の役に立つことはなく、時間がたてば壊れ、いずれ朽ち果てていきます。しかしここにあるものこそが機械の本質的なものであり、ものをつくることの本来の楽しさなのではないかと感じています。なんの役にも立たないからこそ純粋な楽しさ面白さのみがあり、壊れて朽ちてゆくからこそ それが凝縮されて見えるのではないでしょうか。そんなことを思いながら、Paper Robotを細々とり続けています。
 
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