茶運び紙人形

200012月完成  製作期間18カ月 

 
 「朽ちてゆく機械」という妄想の中で、1998年7月26日突然思いついて作り始めたのが紙の茶運人形でした。茶運人形とは江戸期からくり人形の一つで、お茶を注いだ湯呑をお盆にのせると客のところまで運び、空になった湯呑を再びお盆にのせると、Uターンして持ち帰るという一連の動作を行います。自動機械としてみても、単純ですが自立して走行し、動力、伝動、調速、シーケンス制御の基本機能を備え、人形としての偽装動作と機能の絶妙のマッチングという点を含めるとその完成度は高く、これを紙で作れればまさに「朽ちてゆく機械」ではないかと思えたからでした。茶運紙人形を紙で作る為に、機構部は全てケント紙で作り、頭部と足は張り子で作り、着物は各種和紙で作ることとし、動力ゴムと木製回転軸を除く人形の全てを紙で作っています。
 機構は基本的に「機巧図彙」に準拠することとし紙で製作する上で一部変更を加えています。主軸にゼンマイの換わりとなる糸ゴムを巻きつけ動力を発生させ ラチェットを介して主歯車を回転させ 小歯車で増速して車輪を駆動し走行します。またこのラチェットの機能により糸ゴムを巻くときは主歯車には回転は伝わらずに糸ゴムは主軸に巻かれ、糸ゴムが動力を発生するときは、ラチェットがかみ合い主歯車に動力が伝わる構成となっています。走行速度は、主歯車から小歯車により回転を取り出しガンギ車を回し、天符により調速を行っています。これは機械式時計の冠形脱進機と同じものです。また主歯車に取り付けられたカムによりリンクを介し前輪を操舵し 走行中の直進とUターンを制御しています。また人形らしく見せるため、腕の上下により発進、停止のスイッチ機能をもたせ、クランクを用いて擬装した足の前後動作と首振り動作をおこなっています。
 
手書き図面 茶運紙人形全景
   
メカ正面 メカ側面

 

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