GalleryT

茶運紙人形 ; Grade T

 

能書

茶運人形とは 江戸期からくり人形の一つで、お茶を注いだ湯呑をお盆にのせると客のとこ

ろまで運び、空になった湯呑を再びお盆にのせると、Uターンして持ち帰るという一連の動作

を行います。当時 多かった 山車からくりや屋台からくりのように、人が操作するものとは

違い、自立して走る速さや 経路をコントロールして走行します。自動機械としてみても、単純

ではありますが、動力、伝動、調速、制御(いわゆるシーケンス制御)基本機能を備えており、

また人形としての動作と機能の絶妙のマッチングという点を含め その完成度はかなり高い

ものと思われます。

茶運人形には、機械的にみて四つの機能があると考えられます。第一の機能は、主軸にゼ

ンマイを巻きつけ動力を発生させ ラチェットを介して主歯車を回転させ 小歯車で増速して

車輪を駆動し走行します。またこのラチェットにより ゼンマイを巻くときは主歯車には回転は

伝わらずゼンマイは主軸に巻かれ、ゼンマイが動力を発生するときは ラチェットがかみ合い

主歯車に動力が伝わるようになっています。第二の機能は、走行速度のコントロールというこ

とで、主歯車から小歯車により回転を取り出しガンギ車を回し、天符により調速を行っていま

す。これは機械式時計の冠形脱進機と同じものです。第三の機能は、主歯車に取り付けられ

たカムによりリンクを介し前輪を操舵し 走行中にUターンを行わせます。第四の機能は、腕

の上下によりストッパーをはたらかせ、Go,Stopのスイッチ機能をもたせていることや、駆動

輪を使ってクランクを形成し、擬装した足の前後動作と首振り動作をおこなっていることです。

これらは機械的な機能としては些細なことかもしれませんが、人形の動作にリアリティを持た

せているという意味では、重要な役割をしていると思われます。

このGalleryTに掲載している 茶運紙人形は、江戸時代に細川頼直によって書かれたからく

りのノウハウ本ともいえる「機構図彙」を基本構成とし、立川昭二著「からくり」に掲載されてい

る現存しているからくり人形の資料を参考にして作られています。紙で作るということで一部変

更した個所もありますが、基本的な各部の機能や原理、設計思想は受け継いでいるつもりで

す。また各部の構成は、機構部は 動力のゴムと回転軸の竹ヒゴを除いては、全てケント紙の

切った貼ったで作ってあります。頭部と足は、張り子で作り塗装しています。着物は各種和紙で

作りました。

 

Gallery

画像をクリックすると大きな画像が見られます

全体像

     
茶運紙人形の全
景です
  腕の取り付け部です手
首のピンを抜くと腕とお
盆が取り外せます
  主軸にゴムを巻き取る
ねじまきを差し込んだ
ところです
  着物を外した機
構部の全景です
             

機構部

     
正面   右側面   後面   左側面
     

上面

 

主軸部
主歯車はラチェット
を介して主軸に取
り付けられている

 

調速部
ガンギ車と天符
上部のカギ爪が
腕部の上下と連
動してストッパと
なる

 

操舵部
主歯車に取り付
けられたカムによ
りリンクが押され
前輪を操舵する

「茶運び紙人形の作り方」にて図面、展開図等を公開しています。
興味のある方はご覧ください。



Home